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作者:松島 雄二郎

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作:松島 雄二郎

最終章 『春のマリア』

 春も未だ遠き日、運命の王子は愛した少女の亡骸を抱いて慟哭した。  摩天楼に浮かんだ煌びやかな貴種の微笑みを血涙する憎悪の眼で睨み上げ、復讐を胸に帝国を発った。  春も未だ遠き日、運命の聖女は未だ世界の悪意を知らない。父の温かな腕に抱かれて、悪なる者と善なる者の区別さえつかずに落雪する大地に横たわる者どもを見つめる。  春も未だ遠き日、放浪の旅の果てに少年は己の運命を知った。すべてを取り戻すと決意した。  時は来た。春はもうすぐ傍だ。さあ聴こえるだろう運命の足音が!  舞台はすでに整った、帝国はすでに沸騰しているぞ。無限に積み重なる憎悪の負債が大量の死を願い、悪意の聖歌を唱え始めている。  これより始まるは嵐の春。狂気と裏切りがルールの狂った宴。何も知らぬでは絶命は必死。何一つ欠ける事のない準備は整っているのだろうな!  お前が立ち向かうは死の運命。生半可な決意ではまた犬死にだ。今度は誰を信じる、その友を信じていいのか? 馬鹿め、幾度裏切られれば学ぶのだ。どうせ裏切られるのなら先に裏切ってしまえ。友も女もすべて裏切ってしまえばお前は無敵だ!  野良犬よお前に守り抜けるのか? 愛した公女を、憎めぬ友を、兄と慕った男を、そして己が身を! お前の積み上げてきた全てが試されようとしているぞ。  春はすでに眼前にあり、革命の聖女の物語が幕を上げる。

更新:2024/2/24

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